元来、写真を撮る、或いは撮られる習慣の薄い私。自身が映った写真は多く持ち合わせません。昨夜の「家探し」で発掘?した一枚。これは・・・ビルマと国境を接する中国雲南省南端の街、西双版纳での一枚。この写真には私も思い入れがあります・・・。
西双版纳(シーシュアンバンナ)は少数民族、タイ族の自治州。80年代当時は街をゆく人々の習俗や建物など、中国であることを感じさせない嫋やかな空気の漂う美しい街でした。一人旅だった私。宿から少し離れたお気に入りの食堂で夕食を済ませ、街の中心にあるロータリーに座り込み夕涼みをしながら時間をつぶしていました。
「写真を撮らないか?」
声をかけてきた若い男性。その当時、中国ではカメラはまだ贅沢品。カメラを所有していない人たちへの商売として「写真屋」が結構繁盛していました。
毎回・・
「要らないよ」
って断り続けていた私ですが、その時は何故が撮ってもらいたくなりました。しかし帰国を目の前に控えていたので、彼に相談・・・。
「その写真、日本まで郵送してくれる?」
意外な答えに暫く思案していた様ですが、承諾してくれました。勿論、シーサンバンナに生まれ育った彼にとっては初めて出すであろう国際郵便。切手代も双方分からないので、少し多めにお金を渡したと思います。
その後、暫く彼と歓談。写真屋はアルバイトとの事。お互いの生活、家庭、そして未来の希望など。年もさほど変わらなかった両国の青年は意気投合し握手をして別れましたが正直、その「商品」が日本に届くかどうかは半信半疑でした。そのままお金を着服しても咎められることは有りえず、それはそれで仕方無しと思っていました。
しかし、帰国して暫く経ち、我が家に中国からのエアメールが届きました。中にはこの写真と彼の手紙がありました。嬉しさの反面、彼を疑っていた自分を随分、情けなく感じたものです。
写真に写った二十歳の日本人は46歳になり、家業と3人の子育てに追われながら過ごしています。あの「カメラマン」は今、どこで何をしているのでしょうか。