活字無くしてトイレでの「お勤め」が円滑に終了しない・・・。昔からの癖のひとつ。
漫画でも小説でも新聞でも何でもいいから、手ぶら?ではムリ。
今朝も「お勤め」時間、備えてあった本のページを開くと、故人となった日本の某著名作家が、近代中国を代表する偉大な作家、魯迅が北京時代に住まわれた家を訪ねるくだりでした。
北京独特の胡同の情景描写も面白く読み進んでいると、今から8年前、友人たちと上海に出かけ、同氏が上海時代を過ごした家屋を訪ねたシーンを思い出しました。
蘇州河にかかる外白渡橋を北へしばらく進んだ路地裏に、そのアパートは現存しています。魯迅が住まわれた部屋は、さすがに資料館として保存され公開されています。しかしその他の部屋には今でもフツーに住居として使用されている辺りは中国の寛大さと言えるかもしれません。
地図を片手に探し当て、たどり着いたその場所を観覧。路地から大通りに戻って暫く歩いたところで、前方から歩いて来た女性に声をかけられました。最初は上海語。エッ?という表情の私に次は北京語。
「魯迅の家を探してるんだけど、この近くですよね?」
その問いに対する道案内を差し上げると、彼女の後を歩いていた二人の日本人旅行者が私たちに・・・
「しぇーしぇー!」
とお礼を言ってくれました。
女性ガイドさんも、我々一行を中国人だと信じて疑わなかったのでしょう。
旅行の楽しさ・・・。それは人それぞれですが一つには現地に溶け込んだ心地に浸ることも含まれると感じています。
アメリカでハンバーガーを食べたり、イギリスのパブでウィスキーを舐めたり、イタリアのタヴェルナでパスタを食べたり、ソウルで韓服を着たり、ネパールの街角でチャイを飲んだり・・・。
その旅でも、食事は大衆食堂、宿泊は安ホテル、公園をうろついたり、市場を覗いたり・・・。何か贅沢な体験をした訳でもありませんが、現地に溶け込んで、街角をそぞろ歩けた「上海時間」が今となっては良い思い出です。
上海。それは私にとって最初の外国。そして何故か亡き母が愛し何度も訪れた街。又、訪れる機会があれば・・・。特に観光など出来なくて、虹口にある魯迅公園のベンチに腰掛け、缶ビールでも飲みながら上海の空気に溶かされてみたいと思っています。