晩秋への扉が開きつつある季節。この様な作品は一層心に響きます。
宮本輝「錦繍」。
中年と呼ばれる年齢に差し掛かった「元」夫婦が離婚後約10年の歳月を隔て再会。その後、交わされた手紙が綴る物語です。
ストーリーや描写も流石ですが、所々に散り場まられたメッセージが心に響きます。作家自身の心の中にある不満や怒り、「業」と受け止められる感情など、特に氏の作中では後半に集中する様に感じます。他作品でも同様。読み始めは「つまらんなぁ」と思っても最後まで読み進むと、心打たれる言葉と出会うこと少なくありません。
以下私の感想・・・です。
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生きていることと死んでゆくこと・・・。「人」として生まれても、その環境、生きてゆく過程はそれぞれに違います。その中で育まれる生死観も違って然り。宇宙のからくりの元に生命のからくりがあり、人は死ぬまで生きなくてはならない。それ自体が既に作中で作者の多用した言葉である「業」だと言えるのかもしれません。
恐らくは殆どの人が消したい過去、拭い去りたい記憶を積み重ねながら歳を重ねます。私も同様。押し寄せるその波に慄き立ち止まり、埋没してしまうのは、どうもよろしくない。過ぎ去った事象と割り切ることも時には大事。そして本当に言いたかったことは・・・過去と未来の間に「いま」というものが介在しているということ、そして・・・死んでみるまで分からない。これが結論なのかもしれません。
まぁ、よくわからんけど。よくわからんけど今日という日を精いっぱい生きること、それしかないわな。
それから・・・今朝のS紙朝刊に私の投稿が掲載されています。お手元にございましたらお目通しくださいませ。Sさん、いつも非購読者の私にご連絡くださり有難うございます。