数年ぶりに宮本輝著「異国の窓から」を読み返してみました。
氏の長編「ドナウの旅人」を執筆する為に旅した東欧に於ける道中を記した紀行文です。
「作家」と呼ばれる人種が異国にてどのように行動し、五感を働かせ、そして何を脳と心に刻んでゆくのかが語られる様は、とても興味深い一冊です。同時に、東西の壁が取り払われる「前夜」の欧州各国お国事情などにも一読の価値あり。
光文社版、P59~60にかけての記述は、旅という行為に対する氏の主観、日本という地理的宿命、「創造」と言う人間の不思議な心についての内容の濃い文章が綴られています。
そして番外。ローマの街角で出会った老夫婦と過ごした半日の邂逅も又、旅の醍醐味が語られていると感じます。
いつの日か、私もグリュウワインで体を温めながら欧州を旅したいものですが、叶わずに終わるんでしょう・・・。
沢木耕太郎氏は、ご尊父の死後、その生涯を「無名」という随筆?に綴られました。書中、ご尊父の残された俳句も紹介されていましたが、私と同様、パリに憧れながら、行くことの叶わなかった心情を詠まれたものがあった筈。それがどうも思い出せない・・・。そんなこんなで、又、古い蔵書を引っ張り出して読み返すことになるのです(笑)。