いつもお世話になっているT君からいただきました。
尾道へ小旅行に出かけたそうです。当家の息子と同世代の彼ですが、その言葉づかいや態度、知性には平素より敬意を感じています。
どんな風に育てたらこんな素晴らしい人格を持った「男子」が出来上がるのか・・・。是非一度、親御さんにお会いしてお伺いしたいと思っています。
尾道・・・。そう言えば近年は通過するのみで足を留めていませんな。久しぶりに林芙美子女史の短編小説でも読みながら、街を歩いてみたいものです。
代表作であること異存ない「放浪記」も良いですが、「風琴と風の町」は芙美子一家が貧しさに塗れながら尾道で暮らした光景が浮かんでくるような秀作だと思います。
さて、それはそれとして・・・。
上記のT君に
「尾道へ行ったんなら林芙美子の小説でも読み返してみりゃええが。又、印象が違うかもしれんで」
と提案したところ予想もしなかった返事が・・・
「ハヤシフミコ?誰ですか、それ?」
20代半ばの彼が林芙美子を知らないということに大きなショックを感じました。当家の息子なら知らないと言われても驚きません、残念ながら。しかし国語科ではないとは言え某公立学校の教師でもある博識なT君にすら知られない「存在」になっている。それが現実なのでしょう。
決してT君を責める気はありません。彼が知っていて私が知らないことは山ほどあるし、彼らが知っていて、我々が知らないことも(年代的に)数えきれないでしょう。
今の若者たちは、どんな文学に心を躍らせ、そして震わせながら青春を生きているのだろう。
以前、娘のセンター試験過去問題集(国語)を繙いてみたことがありますが、確かに長文問題の中に昭和以前の「巨人」が残した文学作品が引用されていた印象はありません。
こうやって人々の記憶から消し去られ、葬られるのか。ましてや私も含む一個人への記憶など半世紀もすれば千の風になって漂うのみか・・・。人生とは虚しいものですな。
「はっさくの散歩道」。食後のコーヒーと一緒にいただきました。