朝、高校に向かう娘を途中まで自転車と一緒に送り届けます。
タイミングが合えば瀬戸大橋線の高架を走るベージュに赤帯の寝台列車「サンライズ瀬戸」号に出会えます。
娘:「父さんは寝台列車に乗ったことあるん?」
私:「ああ、保育園児だった頃、鹿児島へ連れて行ってもらったときになぁ。それから・・・中国では何回も乗ったのぉ。」
気付けば私自身も30年以上のご無沙汰です、寝台列車。
娘:「乗ってみてぇなぁ・・・」
私:「まぁ、受験が済んで、大学生になってからのぉ。バイトでカネ貯めて、どっか行ってみりゃええが」
今の時代、寝台列車に乗るというのは特殊な「行為」と言えるでしょう。運賃や所要時間を考えれば、その他の手段に明らかなメリットが有ります。プラスアルファの金額と時間への投資は列車の中で一夜を過ごす・・・という非日常の時間に対するものかと。
店に着いて開店までの時間、宮本輝氏の短編「寝台車」を読み返しました。
大阪から東京に出張するサラリーマンが主人公。終業後、新幹線で上京し前泊するつもりが、ふとした気づきから寝台列車に手段を変更。その車内での一夜が描写され、そして列車事故で無くなった旧友「カツノリくん」を邂逅します。
物語性には乏しいのですが、寝台車という特殊な空間で自分自身と向き合い、語り合う主人公の心情に付き合いながら読んでいると、線路の軋みも感じられる様で好きな作品の一つです。
私自身が今後、寝台列車に乗るのはいつのことやら想像も付きませんし、乗ることはないのかもしれません。しかしその特殊な空間で一夜を過ごす機会に恵まれたならば何を、そして誰を思うのでしょうか。