地元の文房具屋さん・・・というか私にとっては「本屋さん」として思い出の詰まった小さな(失礼をお許しください)お店です。
初めて自分が自分の財布の中身で、そして自分の意思選択で本を買ったのがこちらでした。
小学校5年生だったと思います。それまでも読書という行為が、どちらかといえば「好き」でした。しかし本などというものはカネを出して購入する物ではなく、図書館へ行って借りて来るもの・・・という感覚でした。
就学前は時々やって来る「移動図書館」で。小学校に就学後は校内の図書館がその「仕入先」。必然的に子ども向けでハードカバーの本ばかりです。
実家から、こちらのお店に行くまでの途中にもう一件、文具店(兼駄菓子屋)N商店があり、平素必要な文具はN店で調達していました。おそらくその折には自分の気に入ったものが手に入らず、すこし遠征してみたのでしょう。
目当ての文具を買ったのかどうか記憶はありません。しかしその時、レジの前の書架に並べられた文庫本群に目が止まったのです。
今まで知らなかった文庫本という世界。その中から適当に選りだした一冊の値段を見て驚きました。160円?この程度の価格で「本」が買えることに驚愕したのです。
是非とも一冊買ってやろう!と決め込みましたが中々絞りきれません。結局ページ数の一番少ないものを選んで買い求めました。その本は・・・
眉村卓著「地球への遠い路」 角川文庫
SF小説です。正直、その本のあらすじなどに対する記憶は曖昧なのですが自分でも本を買うことができるということ、それ自体に深い喜びを覚えたのです。
その後もお小遣いの中から一冊、又一冊と買い求めました。中学生になると列車で岡山駅まで出向き、地元のお店とは比べものにならない「巨大」な書店で本を選ぶことが楽しくて仕方ありませんでした。
あれから・・・40年。今は幼かった頃に回帰したのか「買う」よりも「借りる」方が圧倒的に多くなりました。勿論、そこには懐の事情ってのが有るのも事実ですが、空気感として書店よりも図書館のそれの方が好きなんだと思います。
気付けばもう、ウン十年もこちらの店にお邪魔していません。久しぶりに一冊求めに出向いてみましょうか。