昨日の雪景色から一変。今日は気温も上昇し小春日和を感じられる一日になりそうです。
先日来の報道によると北陸地方の降雪量はハンパないらしい。富山に帰省した次女の友人からも写真が送られて来るとのこと。「晴れの国」の住民にとっては新鮮な画ですが、その土地で暮らす当事者の皆様にとっては災難とも言える状況の筈。年々歳々それなりに想定内で四季が移り変わる国にはもう戻れないのでしょうか?
私にとって富山は未訪の地ですが敬愛する宮本輝氏の著作の中では何度も遊ばせてもらい馴染みのある地名です。
氏が小学生の頃、大阪で事業に失敗し助けを求める様に逃げ込んだのが富山でした。
その頃の経験は大作「流転の海」や長編「田園発 港行き自転車」にも描写されていますが私の一番好きなのは短編「幻の光」に描き出された富山です。
幼なじみと結婚した夫婦。子どもが生まれた3ヶ月後、夫が突然鉄道自殺で世を去りました。思い当たる理由も無く、何がなんだか分からない状態で寡婦となった若き未亡人は人の紹介で同じく生き別れで寡となった富山在住の男の元に嫁ぎます。
その土地で日本海を見ながら亡くなった元夫に問いかけ語りかけるのです。
貧しさや困窮を糧にできる人間と、その貧しさを悪のベクトルに増幅させる人間と二通りある、、、誰の著書だったのか、細かい文言も忘れたけどそんな意味の文句思い出しました。
尼崎の貧乏長屋で出会った人々との記憶。電気もない廃墟のようなビルで暮らした日々、、、。文学という分野に才能を開花させることの叶った宮本輝氏は明らかに前者の一人だと言えるでしょう。
再婚相手の民雄が言った一言、、、。
「人間は精が抜けると死にとうなるんじゃけ」
その言葉を聞いた主人公は以下引用、、、
「•••確かにこの世には、人間の精を抜いていく病気があるんやと、あれ以来わたしは考えるようになった。体力とか精神力とか、そんなうわべのものやない、もっと奥にある大事な精を奪っていく病気を、人間は自分の中に飼うてるのやないやろか。そうしみじみと思うようになったのでした・・・」
外出、外食することすら憚られる昨今。再読も大いに結構、本と一緒に過ごす時間も中々良いものですよ。