郷土出身の大作家様であるにも関わらず中々「ご縁」をいただけなかった百閒先生の随筆を拝読しております。
入手先は件の古書店。同店で今まで求めた古書の中では破格の高額商品!金参百円也。
自身が錬金術とも称した借金の手管や金銭への価値観などに頷かされたり笑いがこみ上げてきたり、そしてその天分の才溢れる名文に流石と唸らされたり、、、。続編や代表作でもある阿房列車シリーズにも是非「同乗」させていただきたいものです。
作中、氏が六高(現朝日高校)時代に師事した素琴先生こと、志田義秀氏のお住まいを訪ねる話の中には学校の近所、門田屋敷の情景なども描写され親しみを感じます。文面を携えて、この辺りでは?と捜索に歩いてみるのも面白そうですね。
しかし往年、即ち船が交通手段の王者だった時分、あの界隈は随分賑やかだったらしくで同著や漱石の作中、そして敬愛する河井継之助や成島柳北の残した紀行文の中にもその様子が描かれています。
柳北の日記には名物の大手饅頭や白羊羹(白糖で作ったもの)の名前も出てきます。そう、羊羹、、、。
先日、友人K氏と幼少時代に好んで食べた駄菓子について話していた折。話題が当時、木のモロブタに並んで売られていた水羊羹に至りました。あれは美味かったなぁ!と私の弁に、氏は私以上にその羊羹を愛されていたのでしょう。その味を再現すべくご自宅のキッチンで試行錯誤を繰り返し、満足できる水羊羹を自作することを叶えたらしい。そして今朝、、、、その逸品をご持参くださいました。
仕事前、お茶と一緒にパクリ、、、。確かに!あの味!あの食感!源吉兆庵でもこの味は再現出来まいぞ(笑)。
心も体も幼少時代に戻ることは出来ません。しかし目を閉じて舌の上で懐かしい味を転がせば、束の間あの甘えることが許され、守ってくれる家族に囲まれていた日々の記憶の中に旅することが出来きました。
ごちそうさま!そして、ありがとう!